明治以降に活躍した実業家たちのお屋敷には、訪れる客を迎えるための部屋がつくられていました。
そこは、匠の技とおもてなしの心に圧倒される極上の空間です。
代表的な迎賓用の部屋
遠山記念館(旧遠山家住宅)
旧石川組製糸西洋館
設計者:室岡惣七(1885-1951)
埼玉県入間郡堀兼村出身。東京帝国大学で洋風建築を学ぶ。 遠山記念館、旧石川組製糸西洋館は室岡惣七の代表作。
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遠山記念館の魅力 遠山記念館学芸員 久保木 彰一
田園地帯の中に濠を巡らせた大邸宅の佇まい、長屋門をくぐって進むと、茅葺き屋根の豪農風の建物が見えてくる。圧倒的な存在感のあるこの表玄関は一度没落
した生家の趣を昭和スタイルに再現したもので、中に入れば書院造りと数寄屋造りの落ち着いた雰囲気の座敷が続いています。昭和11年の竣工以来、増改築をせず
に当初の姿をよく伝えていて、建築技術、材料、意匠のいずれにおいても最高級の完成度を誇っています。
中棟の2階へ上がれば、予期もせずに和洋折衷の洋風応接室と寝室が現れ、アールデコの照明、ティーテーブル・ソファに、オパールガラス填め込み窓と、和の正統な
床の間が違和感なく組み合わされる様子に新鮮な驚きを覚えることでしょう。2階は春秋の特別公開日にご覧いただけます。